個人の行動履歴を活用できるデータベースに変える方法

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2017年01月19日

前回のコラムでは、異なる個人の行動履歴データから作ったそれぞれの関係性グラフを統合して、シンプルにモデル化する方法をご紹介しました。

今回はそれを踏まえて、統合されて大きなデータになった関係性グラフをマーケティングに活用するための使い方と、活用できるデータについてお話します。

膨大な行動履歴をひとつにする意味

ある人の数か月にわたる行動履歴があった場合、どのような関係性グラフができるでしょうか?

例えばBさんの行動履歴を関係性グラフで表した場合、このようなイメージになります。

Bさんの行動履歴で作成した関係性グラフの一部
Bさんの行動履歴で作成した関係性グラフの一部

※ノード同士のつながりの強さはリンクの距離で表されます。図では、わかりやすくするためにリンクの距離を数字でも表しています。

 

さて、ここに「Aさん」とも「Bさん」ともまったく面識のない「Cさん」を中心としたグラフを統合することにします。

どのようにするかといえば、まず共通のノードを探すのです。「Aさん」の関係性グラフにも、「Bさん」の関係性グラフにも「Cさん」というノードが出てくることはありませんが、この3人の関係性グラフに「新宿」や「SBカフェ」といったノードが共通に含まれている可能性はおおいにあります。「ワイン」や「サッカー」といったノードも、探せばあるかもしれません。

そこで、共通するノードを一つのノードにまとめることで、各人の行動履歴を一つの関係性データベースに統合することができます

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それぞれの関係性グラフを統合する

このようにして統合された関係性グラフは、膨大な人の無意識の消費傾向が納められた、マーケティングの一大データベースになりえます

これまでは、マーケティングといえば30代女性や、20代男子といったセグメンテーションを行わねばならなかったのですが、関係性技術の行動履歴データベースを用いれば「ビール」と関係の強い人たちとか、「ワイン」と関係の強い人たちなどといった基準で抽出して、マーケティングを行うことができるようになるのです。

そもそも趣味嗜好の多様化が進んだ現代社会において、年齢や性別でセグメンテーションしてターゲッティングすることには無理があります。

昔は20代男性や50代女性などといったセグメンテーションでも、消費傾向が似ていたためにマーケティングが機能しましたが、現代では同じ50代女性でも、ライフスタイルや余暇の過ごし方が大きく異なります。

この難問を解決するのが、関係性技術と、行動履歴のデータベースではないかと私たちは考えています。

あらゆるデータがリアルタイムで価値を持つ

関係性技術は、自動的にデータを蓄積するセンサーからのデータがあるときに、最も力を持つと思われます。センサーデータの中でも、最もわかりやすいのが、人々の行動履歴データです。

しかし、行動履歴データを入手することは、現状ではなかなか難しくなっています。

たとえば、アップルやグーグルなどは、ケータイ電話でのウェブサイト閲覧履歴を端末内部に記録していますが、それはあくまでも利用者自身のために端末内部で使われることが前提になっています。外部業者への提供は今のところ考えられていません。

インターネットプロバイダーも同じく、契約した顧客のウェブサイト利用履歴を記録していますが、プライバシー保護のために外部の人間が見せてもらうことはできません。

本来、そのような行動履歴データは、顧客自身から入手すべきものです。

行動履歴データは個人情報であるため、手に入れるのは不可能ではないかとあきらめている人もいらっしゃいますが、私たちは、顧客自身が利便性のために、行動履歴を業者に提供してくれる時代が遠からず来ると考えています。

なぜ、私たちがそれを信じることができるかを説明しましょう。

そもそも個人情報とは何でしょうか。一般には、氏名、住所、電話番号などの個人を特定できる情報のことをさします。しかし、私たちがそれらの情報を厳重に秘匿しながら生きているかといえば、そういうわけでもありません。

たとえば、私たちは初対面の人間と挨拶を交わすときに、本名を告げることをためらいません。名前と顔写真は個人情報の最たるものですが、日常的に名前や顔を隠しながら生活している人はいません。いるとしたら、たぶん警察に追われている犯罪者です。

あるいは、銀行に口座をつくるとき、電気やガスや水道のサービスを受けるとき、ケータイ電話を契約するとき、私たちは何の疑問もなく、氏名や住所、電話番号を提供します。

実際のところ、本当に銀行口座をつくるときに電話番号が必要かどうかは疑問です。電話を契約していない人もいるはずですし、商品の売り込み以外で銀行から電話がかかってくることもほとんどありません。それでも、電話番号を提供することをためらう人はいないでしょう。

このように、個人情報といわれているものは、本人が納得して提供するのであれば、何の問題もなく入手できるものです。もちろん、その際に、企業側には秘密保持が求められます。

便利なサービスを享受するために情報は提供される

たとえば、グーグルは利用者の検索履歴や移動履歴をはじめとして、多くの個人情報を収集していますが、それでもグーグルのサービスは使われています。

グーグルが提供する無料のメールサービス「Gメール」は、メールの内容をコンピュータが自動的に分析して、その人に合った広告を提供する仕組みになっています。これは、個人的なメールの中身をデータ分析されていることになりますが、だからといってGメールの使用をやめる人は少ないでしょう。

フェイスブックは、本名をはじめとして、その人のソーシャルな関係を情報収集し、おおやけのものとしてしまいます。昔は、他人に知られていないコネが権力の源になっていたのですが、さまざまな情報がオープンになりつつある現代では隠すことのほうが普通でなくなりつつあるようです。

私たちは、便利なサービスを享受するためであれば、ある程度の情報を提供する必要があることを知っています。もちろん、提供してもよいと思える情報の範囲は人によって異なりますから強制することはできませんが、適切なサービスの提供と引き換えに情報の提供を求めることは決して難しくありません。

個人情報の保護についても、個々の端末の内部で氏名や住所などを削除した匿名性の高いデータをつくったうえで、サーバーに行動履歴データなどを送信する仕組みにしておけば、仮に企業からのデータの漏洩があったとしても個人を特定することはできなくなります。要は、やり方次第です。

現在は、まだ個人情報の取り扱いに関しては過渡期です。ただちに個人情報の活用がオープンにはならないと思いますが、将来はまた違った常識と基準がつくられることでしょう。

また、たとえ行動履歴が手に入らないとしても、他のデータベースを統合することでいくらでも代替ができます。

たとえば、NTTドコモが販売しているケータイの移動履歴からは、人々の移動傾向を知ることができます。

また東日本大震災の際に大活躍した、ホンダの車載カーナビに記録された車の移動履歴も、同様に人々のライフスタイルを知るうえでおおいに参考になります。

そのほか、SNSやブログや掲示板などの、ネット上の書き込みは、人々の興味関心や趣味嗜好を知るうえで、非常に役に立つデータベースです。

さらに、自社商品のマーケティングについては、自社のウェブサイトを訪問したお客様たちのアクセス履歴なども使うことができます。

時代の空気や動向を知るうえでは、新聞や雑誌、ニュースサイトなどの記事を、関係性データベースに取り入れていくことも大切でしょう。

あらゆる蓄積データから関係性グラフを作成できる

このような代替手段を用いれば、行動履歴をすぐさま手に入れることが難しい現代においても、マーケティングに使えるデータベースを、関係性技術でつくることができます。

いかがでしたか?次回は関係性データベースのつくり方を解説します

前回:先入観なくデータ活用をするためのシンプルな考え方

次回:いつ、誰が、どこで、何を求めるかを評価するしくみ

関連資料:関係性かんたんガイド

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