顧客から寄せられた膨大な声の中から、有用な情報を拾い出す 

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2017年08月04日

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ここまでの事例は、関係性技術をレコメンデーション・サービスに適用するものが多くなっています。関係性技術の最も典型的な使い方は、人々の行動履歴を関係づけることで未来予測を行うことですから、最も簡単に思いつくマーケティング手法がレコメンデーションになってしまうのです。

しかし、関係性技術は、レコメンデーションだけに限定されるサービスではありません。ユーザーの発想次第でいかようにも応用が可能な幅の広い技術です。

ここでは、レコメンデーション以外の事例として、雑多なユーザーの声を集約して、商品の改善に活かす、といった使い方を挙げておきます。

すでに説明したように、関係性技術は、ノード同士の関係を見るものですから、ノードの境界が明確になっている構造化データであれば、加工をせずともそのまま分析を始められます。データをいじらずに、すぐに分析を開始できるところが、関係性技術の大きな特長の一つなのです。

しかし、さすがに関係性技術といえども、非構造化データを扱うときには、データの加工が必要になります。

非構造化データの代表は、文書、画像、音声、動画などのアナログデータです。これらをデータ分析するためには、アナログの連続的なデータの連なりに、何らかの構造を規定して、データを切片にしなければなりません。

非構造化データの中で最も加工が容易なのは文書でしょう。文書は言語によるテキストの連なりですが、言語自体には一定の構造があるため、比較的簡単に構造化データをつくることができます。

たとえば、手元にアナログの物体としての書籍があるとしましょう。一つひとつのページに記されているのは活字なので、まずスキャナで読み取ってデジタルデータにしたうえで、OCR(Optical Character Recognition: 光学文字認識)ソフトを使ってテキスト情報にすることで、分析をしやすくすることができます。

しかし、デジタルの文字データというものも、完全に構造化されたデータとはいえません。構造化データとは、リレーショナルデータベースで扱えるように何らかの構造で形式化したものです。

デジタルデータとしてのテキストを構造化データにするためには、テキストマイニングの手法が参考になります。すなわち、文書を形態素解析して、それぞれに意味をタグ付けするのです。もっとも言語の場合は、すでに意味を持っていますから、厳密に扱うのでなければタグ付けの必要はありません。

たとえば、次のようなテキストがあったとしましょう。「関係性技術は世界で一番簡単なデータ分析の技術です」 これを形態素解析すると次のように分節されます。

「関係性技術」「は」「世界」「で」「一番」「簡単」「な」「データ分析」「の」「技術」「です」 

これらの語句の一つひとつを、それぞれノードと定義することで、日本語のテキストを関係性技術で扱うことが可能になります(英語の場合は、単語があらかじめ分かれているので、形態素解析をせずとも、そのまま関係性技術で分析できるでしょう)。

では、テキストをどのようにマーケティングに利用するかを見てみましょう。

たとえば、自社の商品やサービスに対する顧客の声を、SNSから拾うようなケースが想定されます。商品名やサービス名の入った書き込みを、自動的にロボットで収集して、それをデータ分析することで顧客の潜在的なニーズやウォンツを拾い上げることができるようになるかもしれません。

あるいは、自社の消費者相談センターに寄せられた顧客の意見や、ウェブサイトのお問い合わせコーナーにいただいた商品への要望なども、関係性技術で自動的に分析できる可能性があります。

たとえば、あなたの会社が化粧品の会社であったとして、次のような意見がたくさんあったとします。

「商品Aは私の肌にとてもよく合っています」
「商品A、高いけどとてもいい」
「昨日、商品Aを買いだめしてきた。あまりお店に置いてないんだよね」
「商品A買ってきた。楽しみ」

 このような意見がたくさんあったときに、どれがユーザーの多数意見で、どれが少数意見であるのかを、人の目だけで見分けるのは困難です。

もちろん「すぐなくなる」とか「高い」とか「お店にない」とかの特徴的な意見を取り出して、人の手で数を集計することは可能でしょう。しかし、それもあまりに数が多くなると、人手とコストがかかりすぎて、費用対効果があまり高くありません。

そこで、ユーザーの声をデータ収集して、形態素解析したうえで、関係性技術で分析してみました。

商品Aを基点ノードとして、近距離にあるノードを見てみると「いい」とか「ボトル」とか「買った」とか、商品Aに直接、関係のある言葉が並んでいることがわかります。それはおおむね、人間が目で見て得られる印象と大きな変わりがないような気がします。

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ここで、もう一つの基点として「ボトル」を選んでみると、近くに「小さい」というノードが表れてきます。おそらく、ボトルが小さいから、すぐに中身がなくなってしまうことに対する不満の声です。

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これは、実際に、人が自分の目で確認しているだけでは気づけないような小さな声です。なぜなら「小さい」は「商品A」に直接、関係しているノードではないからです。「商品A」と「ボトル」が関係して、「ボトル」と「小さい」が関係しているのですが、そのことは、関係性技術を使わなければ発見できなかったでしょう。

データ量が多くなればなるほど、アナログの意見を人が手で集計してまとめるのは、コストがかかって難しくなります。また、人力で集計すると、曖昧な意見がまとめられてしまったり、少数意見が無視されてしまったりする弊害があります。

しかし、そのようにして埋もれてしまう意見の中に、しばしば商品改善のヒントが隠されているものです。「ボトルが小さくて不便」というのであれば、ボトルのデザインを変更する余地があるかもしれませんし、大容量ボトルの商品を企画してもいいかもしれません。

このように、テキストマイニングの技術を使えば、関係性技術により消費者の声を分析することで、自社の商品やサービスに有用な意見を拾い上げ、マーケティングに活かすことができます。

前回:カーナビの移動履歴から、その人に合った情報を提供する

次回:顧客自身ですら意識していないニーズを切り開く

関連コラム:文章を関係性技術で扱えるデータに変換するための考え方と形態素解析術

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